HIBIKI FP OFFICE(愛知県名古屋市のFP事務所)の重永です。

「サラリーマンのスーツ代は経費になるのか?節税できるのか?」

この記事ではサラリーマンのスーツ代は既に「みなし経費」として給与所得控除の中に含まれているということをお伝えしました。

数年前から「スーツは経費になる!」という謎の噂が広がった原因は「特定支出控除」を浅く理解した人が広めた半分間違った噂です。

今回はこの「特定支出控除」について解説します。

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【特定支出控除とは?】

サラリーマンが1年間に支出した「特定の支出」が一定の条件を満たせば経費として認められ、所得税が安くなる制度です。

制度自体は以前からありましたが、2013年に「特定の支出」の範囲が改正されました。

2012年までは

・通勤費
・転居費
・仕事に必要な研修費
・仕事に必要な資格取得費
・単身赴任者の帰省費

これが給与所得控除額を超えた分しか「特定支出控除」の対象になりませんでした。

ところが2013年の改正で上記の支出範囲に加えて

・弁護士、税理士、公認会計士などの資格取得費
・勤務必要経費(図書費、衣服費、交際費)※上限65万円

が新しく支出範囲に含まれるようになりました。

2013年からはこれらを全て合算して給与所得控除額の半分を超えた分が「特定支出控除」の対象になります。

【なぜ謎の噂が広まったのか】

2013年の改正を「サラリーマンのスーツも経費になるらしい!」とだけ解釈して、給与所得控除の半分を超えた分だけという部分は置き去りにされたからだと思われます。

たしかにサラリーマンの経費も給与所得控除とは別で経費計上することが可能ですが、そのためには特定支出が年間で給与所得控除額の半分を超えなければなりません。

しかも経費として認められるのは、その超えた分のみです。

実際にどれくらい支出すればこの制度の対象になるか年収500万円の人を例に考えましょう。

【年収500万円の人の場合】

令和2年以降で計算します。

出典:国税庁

年収500万円の人の給与所得控除額は144万円です。

この人が特定支出控除を受けるためには144万円の半分72万円以上を支出しなければなりません

社会保険料等を引いた手取り額は400万円を切ります。

手取りの5分の1も仕事のために支出するでしょうか?

単身赴任が決まり、それに伴う転居費と年数回の帰省費や他の特定支出が重なればありえるかもしれませんが、毎年毎年は難しいでしょう。

【特定支出控除を受けるには】

上記の要件を証明するための証明書が必要です。

「仕事で必要な資格取得」かどうかを証明するためには会社からの証明書が必要です。

国税庁の様式を使って証明してもらわなければなりません。

もちろん領収書も必要です。

【まとめ】

サラリーマンが事業主のように経費を使うのは現実的に難しそうです。

すでに給与所得控除という恩恵を受けているので、経費のことは考えないでいいですね。

ただ、単身赴任が決まった人は知っておきたい制度です。

年間数万円単位で税金が安くなるかもしれません。